子どもが発達障害だと診断された時、ふと自分の幼少期と重なって見えた——
そんな経験はありませんか?私もその一人です。親の私自身にも、確実に発達特性があります。
この記事は、私の小さなカミングアウトと、同じ立場の親御さんへのメッセージです。
はじめに
ASDの娘と、ADHDの息子と暮らす日々の中で、私はある事実と向き合うようになりました。
親の私自身にも、発達特性がある。
正式な診断を受けたわけではありません。でも、自分の生きづらさの記憶を辿り、子どもたちの姿に自分の幼少期を重ねるたびに、それは確信に変わっていきました。
この記事は、私の当事者親としての小さなカミングアウト であり、同時に、「実は私も…」と思っているかもしれない親御さんへ向けたメッセージ でもあります。
「子どもが発達障害なら、親も特性を持つことが多い」という事実
子どもの発達障害が分かった時、親御さんが感じる気持ちは様々です。
驚き、戸惑い、不安、自責の念——その中で、ふと自分の幼少期を振り返って、「あれ、もしかして私も?」と気づく方は、実はとても多いんです。
これは偶然ではありません。
発達障害の遺伝的要因
近年の研究では、発達障害には遺伝的要因が大きく関わっている ことが分かってきています。
国立精神・神経医療研究センターの解説によれば、自閉スペクトラム症(ASD)の遺伝率は約80%以上¹、ADHDは約70-80%²と推定されており、双子研究や家族研究で繰り返し確認されています。
これは、「親や兄弟にも、同じ特性が見られることが珍しくない」という意味です。
「親も特性がある」は、当たり前のこと
そう知ってからは、「親が発達特性を持っていること」は、むしろ自然なこと だと理解するようになりました。
「私が悪い親だから子どもがそうなった」のではない。「私たち親子は、似た脳の使い方をしている」だけのこと。
この視点の転換は、私自身にとって大きな救い でした。
私の特性 — 「集中持続が難しい」タイプ
私の発達特性は、特に「集中が続かない」「今やっていることから別のことに意識が逸れやすい」タイプです。
仕事中、ちょっと別のタブを開いたら、元の作業に戻るまでに時間がかかる。会議中に気になることがあると、そちらに意識が引っ張られる。複数のタスクを並行することが、極端に苦手。
AIエンジニアという仕事との相性
不思議なことに、AIエンジニアという仕事は、私の特性に合っていました。
新しい技術が次々と登場するこの業界では、「興味のあることを深く掘り下げる」ことが価値になります。私の「興味への強い探索心」「未知への好奇心」は、ここで発揮されます。
一方、「定型業務やルーティンへの苦手意識」は、ずっと残っています。書類整理、定例レポート、決まりきった事務処理——これらは今でも、最も苦手な領域です。
振り返れば、私の幼少期も同じでした
娘や息子の姿を見ていると、自分の子ども時代が重なって見える ことがよくあります。
物忘れと物の紛失が異様に多い子だった
子どもの頃の私は、物忘れと物の紛失が異様に多い子 でした。
学校に教科書を忘れる、消しゴムを忘れる、給食袋を忘れる。一度持ち帰った物を、翌日また持っていくのを忘れる。物をどこに置いたかすぐ分からなくなり、家でも学校でもいつも何かを探していました。
「おっちょこちょい」と笑われ、「よく忘れる子だね」と先生に呆れられ、親は何度も学校に届け物に来てくれました。自分は人より「だらしない子」なんだと、ずっと信じていました。
高校までは、友達を作るのが極端に苦手
そして、高校までは友達を作るのが極端に苦手 でした。
クラスの輪にうまく入れない。雑談の流れがつかめない。冗談を真に受けて変な反応をしてしまう。休み時間に一人でいることが多く、学校という場所が、いつもどこか息苦しい場所 でした。
「人見知り」「内気」という言葉で片付けられていましたが、いま振り返れば、社会的コミュニケーションの困難 があったのだと思います。
当時(数十年前)は、支援も理解もなかった
私が子どもだった数十年前、「発達障害」という言葉は、社会にほとんど浸透していませんでした。
ASDという診断基準ができたのは1980年代。日本で広く認知され始めたのは、ほんの2000年代以降のことです。私が小学生・中学生だった頃には、特別支援教育も、合理的配慮も、専門家のサポートも、ほとんど存在しなかった のです。
「ちょっと変わった子」「だらしない子」「内向的な子」と扱われ、適切な理解も支援もないまま、自分一人で社会に適応する方法を試行錯誤するしかありませんでした。
大人になって — 自力で社会適応してきた日々
幼少期から大人になる過程で、私は自分なりの生存戦略 を編み出してきました。
- 物忘れ対策に、何でもメモする習慣
- 友達作りが苦手なので、興味の深い分野で人と繋がる
- 集中持続のために、タイマーや締め切りで自分を縛る
- 苦手なルーチン作業は、可能な限りツールで自動化する
これらは、当時の私が「自分はこのままじゃダメだ」と必死に編み出した工夫 です。
今思えば、現代の発達特性のある子どもたちが、療育や支援学級で身につけているスキルを、自力で再発明していた ようなものでした。
「もっと早くこういう支援があったら、私の人生はもっと楽だったかも」——そう思わずにはいられません。
IT業界の巨人たちのカミングアウトに、勇気をもらった
そんな私が、自分の特性を肯定的に受け入れられる ようになったきっかけがあります。
それは、同じIT業界の巨人たちのカミングアウト でした。
イーロン・マスクのSNL公表
2021年5月、Tesla・SpaceX創業者のイーロン・マスクは、アメリカの人気番組「Saturday Night Live(SNL)」で、自分がアスペルガー症候群(現在のASDの一形態)であることを公表しました³。
「I’m the first person with Asperger’s to host SNL.」
——という冒頭の挨拶は、世界中に大きな反響を呼びました。
ビル・ゲイツの自伝での告白
2025年、Microsoft創業者のビル・ゲイツは、自伝『Source Code: My Beginnings』で次のように述べています⁴。
「もし今の時代に育っていたら、私は自閉スペクトラム症と診断されていただろう。私の子ども時代には、人によって脳の情報処理の仕方が違うことが、まだ広く理解されていなかった」
ゲイツの両親は「手のかかる息子」と向き合いながら彼を育てたと、彼自身が振り返っています。
「同じ業界に、同じ特性の人がいる」という安心感
世界を変えた偉人たちが、同じような特性を持って生きてきた——そのことを知った時、私の中にあった「発達特性は弱さである」という思い込みが、ふっと解けていきました。
私は彼らほどの天才ではありません。でも、「IT業界の巨人たちも、同じ脳の使い方をしている」と知ることで、自分自身を、そして同じ特性を持つ娘や息子を、「弱さを持った人」ではなく「世界を違う角度から見ている人」として捉え直せるようになりました。
発達障害を公表した他の有名人については、別記事「発達障害を公表した有名人たち」で詳しくまとめています。栗原類さん、沖田×華さん、Fukase(SEKAI NO OWARI)さんなど、日本の有名人も含めて11名を出典付きで紹介しています。
Doingリストという、私なりの工夫
集中持続が苦手な私が辿り着いた、独自の仕事術が「Doingリスト」です。
ToDoリストとは違う、Doingリスト
一般的な「ToDoリスト(やることリスト)」とは違って、Doingリストは「今、何をやっているのか」を意識的に書き出すリスト。
ToDoリスト:この後やること(複数項目、未来)
Doingリスト:今やっていること(1項目だけ、現在)
書類整理、メール返信、コード実装——今この瞬間、自分が何に集中しているのか を1行だけ書く。それだけのシンプルな工夫です。
子どもにも応用できる「いま、何してる?」の問いかけ
このDoingリストは、ASDの娘やADHDの息子にも応用できます。
「次は何をする?」より「いま、何をしてる?」と尋ねる。
子どもの自己認識を促すアプローチで、叱らずに行動の切り替えが起きる ことが多いです。
Doingリストの詳しい使い方や、4つのバリエーション、子どもへの応用は、別記事「Doingリスト完全ガイド」でじっくりお伝えしています。
現代の親御さんへ:私が欲しかったもの
ここまでお読みいただいた方の中には、もしかすると「私も同じかもしれない」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
そんなあなたへ、当時の私が欲しかったメッセージを、いま、お届けします。
1. 「自分はおかしい」と思わないでほしい
物忘れが多い、集中が続かない、人付き合いが苦手——これらは「性格」「意志の弱さ」ではなく、脳の使い方の特性かもしれません。
自分を責める必要はないし、他人と比べて「自分はダメな人間」と思う必要もありません。
2. 子どもの姿に自分を見たら、それは「贈り物」
子どもの発達特性に気づいた時、自分にも同じ部分があると気づくのは、ある意味特別な贈り物です。
なぜなら、子どものことが、当事者の視点から深く理解できるから。
「私もそうだった」「気持ちはよく分かる」と寄り添える親は、子どもにとって、何よりの理解者になります。
3. 「自分も支援されていい」と思っていい
発達特性のある親は、自分にも支援を許可する ことが大事だと思います。
子どもの療育や工夫だけでなく、親の自分にも、補助となる仕組み(タイマー、ToDoツール、AI、Doingリスト)を使っていい。
「自分が頑張ればいい」という発想を手放した時、家庭は驚くほど穏やかになります。
私自身、この考えを実践するために頼っているツールの一つが、Audible(オーディブル) です。
集中持続が苦手な私は、紙の本を1冊読み通すのに数ヶ月かかることもありました。でも「ながら聴き」なら、家事や送迎の時間がそのまま学びの時間になります。発達障害関連の本、子育て本、AI技術書——月に2〜3冊のペースで聴いて、ようやく「読みたかった本を読めている自分」が成り立っています。
子どもには、「ながら聴きでも、ちゃんと本を読んでいるんだよ」という姿を見せられるのも、副次効果として大きいと感じています。
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このサイトを始めた、もう一つの動機
「親が頑張る仕組みを減らす」というこのサイトの方針は、子どものためでもあり、私自身のためでもあります。
発達特性を持つ親が、発達特性を持つ子と暮らすために必要な「仕組み」を、リアルな立場で発信していきたい——そう思って、このサイトを立ち上げました。
私自身が当時欲しかった情報、当事者の親としての等身大の声、そしてAIエンジニアとして見えている未来の景色——これらを混ぜて、同じ立場の親御さんに少しでも役に立つサイト を作っていけたらと願っています。
大切な注意点:診断は専門家へ
最後に、大事なことをお伝えします。
この記事は私個人の体験談であり、医療的なアドバイスではありません。
「自分も発達障害かも」と感じた方は、必ず精神科や心療内科の専門医に相談 してください。発達障害の診断は、医師による問診・心理検査・成育歴の確認など、複数の要素を総合して行われるものです。
自己判断は危険ですし、また、特性があってもなくても、自分のままで生きていく ことの大切さも、合わせてお伝えしておきたいと思います。
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まとめ
- 子どもが発達障害なら、親にも同じ特性が見られることが多い(遺伝的要因)
- 私自身も、確実に発達特性がある(集中持続困難、物忘れ、社会的困難)
- 当時(数十年前)は支援がなく、自力で社会適応してきた
- IT業界の巨人たち(マスク、ゲイツ)のカミングアウトに勇気をもらった
- 「Doingリスト」のような工夫で、自分の特性と付き合っている
- 親も「自分にも支援を許可する」ことで、家庭が穏やかになる
「実は私も」と思っている親御さんへ——あなたは、一人じゃありません。
そして、お子さんにとって、当事者の気持ちが分かる親であること は、何よりも大きな贈り物だと、私は信じています。
出典・参考情報
-
ASDの遺伝率について
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)精神保健研究所「自閉症スペクトラム」: https://www.ncnp.go.jp/
※双子研究を含む発達障害の遺伝率に関する複数の研究で、ASDの遺伝率は80%超と推定されている。 -
ADHDの遺伝率について
Faraone, S. V., et al. (2005). “Molecular genetics of attention-deficit/hyperactivity disorder.” Biological Psychiatry. ADHDの遺伝率は約70-80%と複数の研究で確認されている。 -
イーロン・マスクのアスペルガー症候群公表
CBS News, “Elon Musk reveals he has Asperger’s during ‘Saturday Night Live’ monologue”, May 9, 2021.
https://www.cbsnews.com/news/elon-musk-aspergers-saturday-night-live/ -
ビル・ゲイツの自閉スペクトラム症についての言及
Fortune, “Bill Gates reveals he probably would be diagnosed on the autism spectrum if he were growing up today”, January 25, 2025. 自伝『Source Code: My Beginnings』(2025年出版)より。
https://fortune.com/2025/01/25/bill-gates-autism-spectrum-childhood-neurodivergence-memoir-source-code/





