「ToDoリストを書いても続かない」「やることを決めても、別のことに気が逸れる」。
発達特性のある私が辿り着いたのは、ToDoリストではなく、Doingリスト でした。
はじめに
「やることリスト(ToDoリスト)」を作っても、なぜか続かない。
書いた瞬間は気持ちいい。でも、いざ作業を始めると、いつのまにか別のタブを開いている。気がつけば1時間経って、リストの最初の項目さえ終わっていない——。
これは、私自身が長年抱えていた悩みです。発達特性、特に注意の持続が苦手な方 なら、誰もが共感する状況だと思います。
そんな私が辿り着いた、たった一つのシンプルな仕事術が「Doingリスト」です。
この記事では、「Doingリスト」とは何か、なぜ効くのか、そして実際の作り方を、私自身の経験と一緒にお伝えします。
「Doingリスト」とは何か?
「Doing」は英語で「現在進行形」、つまり「いまやっていること」という意味です。
| 種類 | 内容 | 視点 |
|---|---|---|
| ToDoリスト(やることリスト) | これからやること | 未来 |
| Doingリスト(やっていることリスト) | 今この瞬間、やっていること | 現在 |
ToDoリストが「この後10時間で何をするか」を書くものなら、Doingリストは「今この30分、何をしているか」を1行だけ書くものです。
Doingリストの最大の特徴
Doingリストには、今この瞬間にやっていることを、たった1行だけ書きます。
- ✅ 「Aさんへのメール返信」(ピンポイント・1行)
- ✅ 「会議資料3ページ目を完成させる」(ピンポイント・1行)
- ❌ 「メール、資料作成、議事録、レビュー」(複数項目はNG)
「今、これだけをやる」と一点集中するための、究極のシンプルなツール です。
なぜDoingリストが、発達特性のある人に効くのか?
ToDoリストは、ある意味「未来の自分への命令書」です。複数のタスクが並ぶことで、注意が分散します。
一方、Doingリストは「今の自分への小さな約束」。1つの項目に意識を縛りつけることで、注意の散漫を防ぐ「視覚的アンカー」 になります。
発達特性的に、3つの効果
1. 注意の散漫を防ぐ
ADHD的な傾向のある方は、頭の中で複数のタスクが同時に浮かびがちです。「今やっていること」を目の前に1行だけ表示 することで、意識をその1点に固定できます。
2. 「やった気」だけで終わるのを防ぐ
ToDoリストは「書いた瞬間に達成感を得て、実際にはやっていない」というワナがあります。Doingリストは実際にやっている最中に書く ので、その罠にハマりません。
3. 切り替えの瞬間に「立ち止まる」装置
別の作業に気が逸れそうになった時、Doingリストが「あ、いま自分はこれをやっていたんだ」と思い出させてくれます。注意のリカバリーが速くなる効果があります。
私がDoingリストに辿り着くまで
私自身は、AIエンジニアとしてソフトウェア開発の現場で働いています。
仕事の特性上、深い集中が求められる作業 が多いのですが、長年「集中の持続」が課題でした。ToDoリストアプリ、ポモドーロ・テクニック、タスクボード、各種ツールを試してきましたが、どれも数日でやめてしまう 繰り返し。
ある日、友人のエンジニア(同じく発達特性のある方)から、こんなアドバイスをもらいました。
「やることを書くんじゃなくて、今やっていることを、紙の真ん中に1行だけ書いてみたら?」
最初は半信半疑で試したのですが、これが驚くほど効きました。1週間続けたら、生産性が体感で1.5倍に。3ヶ月続けたら、もうこれなしでは仕事できない体になりました。
Doingリストの作り方(超シンプル版)
必要なもの
- 紙1枚と、ペン1本
- (デジタル派なら)スマホやPCのメモアプリ
それだけです。アプリも、専用ノートも、特別な道具も要りません。
5つのステップ
1. 紙の真ん中に、1行だけ書く
「Aさんへの返信メールを書く」
これだけ。複数行書きません。1行だけです。
2. 完了するまで、その1行を見続ける
机の上に置いて、視界から外さない。目に入るたびに「いま自分はこれをやっている」と確認できます。
3. 完了したら、横線で消す
「Aさんへの返信メールを書く」← 横線で消す
これは達成感のためのご褒美。「達成 → 達成 → 達成」の連鎖を作ります。
4. 次のタスクを、また1行だけ書く
「会議資料の3ページ目を仕上げる」
5. 1日の終わりに、その紙を眺める
横線で消されたタスクが並んでいる紙を見ると、「今日、自分はこれだけやった」という証拠が物理的に残ります。これが翌日の活力になります。
4つのバリエーション
Doingリストは、シンプルさが命。でも、自分のスタイルに合わせて変化させることもできます。
バリエーション1:紙の付箋
机に貼っておけば、常に視界に入ります。完了したら剥がしてゴミ箱へ という物理的な達成感が大きい方法です。
バリエーション2:スマホのメモアプリ
外出先や複数の場所を移動する仕事ならこちら。iPhoneの「メモ」アプリ、Google Keep、Notion等、何でもOK。通知をオンにして、常に視界に表示しておくとさらに効果的。
バリエーション3:物理タイマーとの併用
「いまこれをやる」と書いたら、卓上タイマー(時っ感タイマーなど)を15分セット して、その時間だけはそのタスクに集中する。Doingリスト + 時間制約 = 最強の集中ツール になります。
バリエーション4:AIアシスタントと連携
ChatGPTやClaudeに「いまから30分、Aさんへの返信メールを書きます。30分後に確認してくれますか?」と話しかけると、AIが時間を意識する相棒になります。発達特性のある方には特に効果的な使い方。
子どもへの応用
驚いたことに、Doingリストは発達特性のある子ども にも応用できます。
「次は何をする?」より「今は何をしている?」
子どもに「次は宿題やってよ」と言っても動かないのに、
「いま何をしているの?」と尋ねて、本人に「ゲームをしている」と答えてもらうと、不思議と切り替えがスムーズになることが分かりました。
「次にやらせる」のではなく、「今やっていることを意識化させる」アプローチです。
朝の支度に応用
ADHDの息子の朝の支度を例にすると:
- 親「着替えて」 → 動かない
- 親「いま何してる?」 → 「漫画読んでる」 → 「漫画読んでる」 → 「(自分で気づく)あ、着替えなきゃ」
子どもの自己認識を促すアプローチで、叱らずに行動の切り替えが起きる ことが多いです。
ASDの娘への応用
ASDの娘の場合、Doingリストの1行表示 が予測可能性を作ってくれます。「次に何が起こるか分からない」不安を持ちやすい彼女に、「今、これをやっている」という現在の固定化が安心を提供します。
よくある失敗と対策
失敗1:複数のタスクを書いてしまう
やめましょう。1行だけの厳格なルールを守ることが、Doingリストの命です。
「でも複数のタスクを並行したい」と思った時こそ、優先順位を決めて1つに絞る訓練の機会です。
失敗2:書いてから始めない
書いただけで満足しないために、書いた直後の3秒以内に実際にその作業を始める ことを習慣化しましょう。
失敗3:横線を引かない
完了したら必ず横線を引きます。達成の証拠 が積み重なることが、継続の原動力です。
ToDoリストは捨てるべきか?
いいえ、ToDoリストとDoingリストは併用 が最強です。
- ToDoリスト: 1日の最初に、その日にやることを書き出す(全体像)
- Doingリスト: その中から、今この30分でやることを1行に絞る(現在の集中)
ToDoリストが「地図」なら、Doingリストは「今いる場所」。両方あるから、迷子にならずに進めます。
具体的な1日の使い方
私の典型的な1日:
8:30 ToDoリスト:今日のタスクを5つ書き出す
9:00 Doingリスト「メール3通の処理」 → 9:15 完了 → 線を引く
9:15 Doingリスト「会議資料の修正」 → 10:00 完了 → 線を引く
10:00 Doingリスト「Aさんへの相談メール作成」 → 10:30 完了 → 線を引く
10:30 休憩(5分)
10:35 Doingリスト「コード実装(機能A)」 → 12:00 完了 → 線を引く
12:00 ランチ
13:00 ...
1日の終わりに、横線で埋まった紙を眺める時間 が、何より気持ちいい瞬間です。
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まとめ
| ToDoリスト | Doingリスト |
|---|---|
| 未来の予定 | 今の集中 |
| 複数項目 | 1行だけ |
| 書くと達成感(罠) | 完了で達成感(健全) |
| 注意分散の原因にも | 注意のアンカー |
Doingリストはたった1行、紙とペンだけで始められる、究極のシンプルな仕事術 です。
特に、発達特性のある方や、集中の持続が苦手な方 には、人生を変える可能性のある工夫だと、私自身の経験から確信しています。
「今やっていること」に意識を集中させる、シンプルな仕掛け。
ぜひ、明日の朝から試してみてください。






