「この店、行けない」
——ASD娘との外食は、9割の店舗で入店すらできない。それでも家族で外食を諦めない、6つの戦略を公開します。
はじめに
「家族でレストランに行く」——多くの家庭では、何気ない週末の楽しみ。でも、ASDのお子さんがいる家庭 にとっては、重大なミッションになります。
我が家のASD娘(中3)との外食は、9割の店で「入れない」というハードな現実。それでも、家族で外食する喜びを諦めない6つの戦略 を、3年の試行錯誤の末にまとめました。
ASDの子の外食が大変な理由
理由1:感覚過敏(複合的な刺激)
レストランは、ASDの子にとって刺激の塊:
- 音:他客の会話、食器の音、BGM、店員の声
- 光:明るい照明、点滅する看板
- 匂い:複数の料理の混ざった香り、香水
- 温度:冷房や暖房の風
- 触覚:固いソファ、温かい食器
これらすべてが同時に来ることが、ASD娘には激しい疲労を生みます¹。
理由2:食事へのこだわり
- メニューの細かいこだわり
- 食材の組み合わせ
- 温度・食感
家での食事ですら難しい中、外食の不確定要素は不安要因に。
理由3:不慣れな環境への不安
「この店はどんな雰囲気か」「店員はどんな人か」「席はどこか」——予測できない要素が多すぎる。
理由4:同一性へのこだわり
「いつもの店、いつもの席」が安心。新しい店は、入店すら難しい場合がある。
外食バトル戦略6つ
ここから、3年の試行錯誤 でたどり着いた具体的な戦略です。
戦略1:「ホームの店」を3〜5軒持つ
最も重要な戦略。「行ける店」を限定し、繰り返し通う。
我が家の「ホームの店」
- ファミレス(ロイヤルホスト、ガストの一部店舗)
- 回転寿司(スシロー、はま寿司)
- チェーンの洋食店(サイゼリヤ)
- コーヒーチェーン(スターバックス、ドトール)
- ファストフード(マクドナルドの空いている店舗)
なぜチェーン店なのか
- どの店舗もメニューや雰囲気が同じ(予測可能)
- メニューに変動が少ない
- 食材・調理が安定
- 「初めて」のストレスがない
地元の名店より、チェーン店の方がASDの子には遥かに楽です。
通い方
- 同じ時間帯(混雑を避ける)
- 同じ席(可能なら指定)
- 同じメニュー(変更しない)
- 同じ家族構成(できれば)
「いつもと同じ」のルーチン化が、安心の鍵。
戦略2:事前の徹底リサーチ
新しい店に行く時は、事前のリサーチが必須。
リサーチ項目
| 項目 | 確認方法 |
|---|---|
| 店内の様子 | Googleストリートビュー、店内写真 |
| メニュー | 公式サイト・食べログで確認 |
| 混雑度 | Googleマップの「混み具合」確認 |
| BGMの音量 | 食べログ口コミ、行った人に聞く |
| 個室の有無 | 店に直接電話で確認 |
| アレルギー対応 | 公式サイトで確認 |
娘との事前共有
リサーチ結果を写真と一緒に娘に見せる。「こんな店だよ」「席はこんな感じ」「メニューはこれ」と予習 することで、当日の不安を軽減。
戦略3:時間帯と座席を選ぶ
推奨時間帯
| 時間帯 | 混雑度 | おすすめ度 |
|---|---|---|
| 開店直後(11:00〜) | 空いている | ★★★★★ |
| 11:30-12:30 | 混雑(ランチ) | ★ |
| 13:30-17:00 | 空いている | ★★★★ |
| 17:30-19:00 | やや混雑 | ★★ |
| 19:30以降(平日) | 空いてくる | ★★★ |
ピーク時間を避けることが最重要。
推奨座席
- 店の隅・壁際(他客との接触を最小化)
- 個室(可能なら最優先)
- 窓側(視覚的に逃げ場ができる)
- 入口から遠い席(出入りの刺激を避ける)
予約時の依頼
予約時に「静かな席を希望」と伝える。ファミレスでも、配慮してくれる店が増えています。
戦略4:感覚過敏対策グッズの携帯
外出時の必須アイテム:
持参グッズ
- ノイキャンイヤホン(BGMが大きい時)
- サングラス(明るすぎる照明用)
- マスク(匂いの遮断、心理的バリア)
- 手持ちのお気に入りハンカチ(触覚の安心)
- 小さなおもちゃ・本(待ち時間用)
装備の重要性
「いざとなったらこれがある」という安心感だけで、不安が大きく減ります。
戦略5:食べられる料理を確実に確保
外食で「何も食べられず帰る」事態を避けるため、確実に食べられる料理 を把握しておく。
我が家の「確実メニュー」リスト
| 店 | 確実に食べられるメニュー |
|---|---|
| ロイヤルホスト | プレーンオムレツ、ライス |
| スシロー | サーモン、いくら、卵焼き、たまご |
| サイゼリヤ | ポテトフライ、コーンスープ、白いパスタ |
| マクドナルド | チキンナゲット(プレーン)、ポテト、コーラ |
| スターバックス | プレーンスコーン、ホットココア |
これらは変動がない(食材・調理・盛り付け)ので、安心して注文できる。
お弁当持参も選択肢
家族レストランによっては、お弁当持参を許可してくれる店もあります。事前に店に確認 すれば、選択肢が広がる。
戦略6:撤退の判断基準を持つ
「今日は無理」と判断し、潔く撤退することも大事な戦略。
撤退すべきサイン
- 入店前に強い不安を示す
- 入店後5分以内に頭痛・腹痛を訴える
- 完全に固まって動けない
- パニックの予兆(早い呼吸、無口になる)
撤退の手順
- 無理に説得しない(怒鳴ったり叱ったりは禁物)
- 静かに「お店、変えようか?」と提案
- テイクアウトに切り替える
- 次回への教訓として記録
「今日は失敗」ではなく「今日はここまでが分かった」と捉える。
それでも外食する意味
これだけ大変なら「家で食べればいい」と思うかもしれません。でも、外食する意味はあります:
1. 家族の特別な思い出
外食は、家族での特別な体験。「家族と一緒に出かけた」記憶は、子どもの自己肯定感を育てます。
2. 社会との接点
外食を通じて、店員さんとの関わり、他客との共存、社会のルールを自然に学べます。
3. 食の世界を広げる(少しずつ)
新しい食べ物に挑戦するきっかけ。1年に1食でも新しいものを食べられたら、それは大きな成長。
4. 親のリフレッシュ
家事の解放感。親自身が楽になることも、家族にとっては大事。
外食できる店の探し方
「発達障害に優しい店」を探す
最近、発達障害に優しいお店を紹介するブログやSNSが増えています²。地元の情報を口コミ・SNS で探す。
障害福祉サービスとの連携
地域の発達支援センターでは、外出スキルの練習 ができる場合もあります。専門家のサポートを受けながらの外食練習。
自閉症協会のリソース
日本自閉症協会³ では、外出のヒント をまとめた資料を提供している場合があります。
まとめ
ASD娘との外食を諦めないための、6つの戦略:
- 「ホームの店」を3-5軒持つ(最重要)
- 事前の徹底リサーチ
- 時間帯と座席を選ぶ
- 感覚過敏対策グッズの携帯
- 食べられる料理を確実に確保
- 撤退の判断基準を持つ
外食は、ASDのお子さんがいる家庭にとって大きな挑戦ですが、戦略を持って臨めば 可能になります。
「外食は無理」と諦める前に、ぜひこの6つを試してみてください。
出典・参考情報
-
With ASD「自閉症の子どもの感覚過敏」
https://www.with-ac.com/ -
LITALICO発達ナビ「感覚過敏と暮らす」
https://h-navi.jp/ -
一般社団法人日本自閉症協会
http://www.autism.or.jp/








